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債務整理

  • 木村哲司
  • 2020年7月31日
  • 読了時間: 9分

更新日:2020年11月4日


債務整理 借金

債務整理とは

債務整理とは、事を裁判沙汰にせずに弁護士が貸し主と掛け合って、分割払いの約束をする方法です。裁判所に行かなくてすみます。

金額は現在残高。利息制限法の制限金利で計算し直して金額が小さくなったらその金額です。

期間は原則として36回です。


手順

  • 委任契約の締結

まず、弁護士と契約して委任契約書を書いていただく必要があります。

債務整理をすると決めたら、それ以上、借入れをしてはいけません。詐欺になってしまいます。クレジットカードも使わないでください。

反面、それ以上返済する必要はありません。借りない、返さないを徹底しましょう。

  • 受任通知の発送

委任を受けたら、弁護士が受任通知という書面を貸主に出します。今まで滞納すると、がんがん電話が入ってましたよね。でも、受任通知が届くと、貸主は弁護士にしか連絡してはいけなくなります。着信音が鳴る度にびくっとせずにすむようになります。ディスプレイを見て、貸主からの電話だとわかり、出ようか出まいか迷うこともなくなります。非通知の電話に出ようか出まいか迷うこともなくなります。

  • 債権届出

受任通知には、債権の届け出をされたしとの文書も入っています。

債権者から、初めて借り入れてからこれまでの取引履歴が送られてきます。いつ、いくら借りて、いつ、いくら返したかという内容です。受任通知を発送してから2ヶ月から4ヶ月ぐらいの間に送られてきますが、もっと時間がかかる場合もあります。

  • 取引履歴のチェック

取引履歴が送られてきたら、コピーをとって、依頼者にお送りします。いつ、いくら借りて、いつ、いくら返したという履歴に誤りがないか確認してください。

実はこれがそう簡単ではありません。数年前だの十数年前だのに初めて借り入れて、これまでの借入れだの返済だの度に伝票を渡されたり、キャッシングマシーンから伝票が出てきたりしたはずなのですが、それをみんなとっておく人はほとんどいません。その場で丸めて、マシーンの横に置いてあるゴミ箱に捨ててしまう方がほとんどのようです。


私はこれまでに債務整理、自己破産、民事再生を件以上は処理してきましたが、それらの伝票をある程度まとめて保管していた方は3名ぐらいだったと記憶しています。

資料もないのに確認なんかできませんよね。仕方がありません。明白な間違いがない限り、それでよしとしましょう。たとえば、1016年(平成28年)のリオオリンピックがあった年にパチンコで一発当てて、5万円まとめて返したのに、それが書かれていないとかです。ただ、証拠も必要なので、たとえば6万円あてて、それをそのまま預金口座に入金し、翌日、5万円を引き出して返済にあてたとかして、5万円を引き出したことが通帳に現れているとかいうような証拠がないと争うのがなかなか苦しいですよね。


はたまた、その年の3月13日に30万円も借り入れたなんて記録があるとします。そんな記憶はありません。借り入れた額は10万円だけです。その頃、結婚したいと思っていた彼女から20万円もする指輪をねだられていました。15日が彼女の誕生日だったんだけど、その前々日になっても、預金残高が12万円しかなかったので、10万円を引き出して、10万円を借り入れ、指輪を買ってプレゼント。めでたくゴールインということになればいいんだけど、4月にはふられてしまったなんてことがあると、これは明確な記憶が残ります。忘れたい記憶ですけど。自分の預金通帳には13日に10万円下ろした記録。指輪の領収書もありということになると、これは相応の証拠に基づき貸主が提示した取引履歴に誤りあると主張することができるようになります。


ただ、こんな、証拠により明白な間違いと言えるような記載がない限り、開示された取引履歴でよしとするしかないでしょう。事務所に電話して「間違いないと思います。」とおっしゃってください。

  • 引直計算

取引履歴に間違いないと分かれば、制限金利で計算し直します。利息制限法という法律があります。人にお金を貸すときの利率に関して、上限を決めています。

ところが、むかしむかしの話しですが、サラ金業者がそんな定めはまったく無視して、えらい高い金利をとっていたことがありました。しかし、おごる平家は久しからず。最高裁で新たな判断が下されたり、法改正があったりで、今ではこんなことはできません。


いずれにしろ、高金利をとっていた取引を制限金利だけしかとれないという前提で計算し直すと残債務額がどんどん減ってゆき、さらには借入残高が残っていないのに返済するというところまでいきます。それから後にサラ金に支払ったものはいわゆる「過払金」としてサラ金に返せと言えることになります。「過払金」って、テレビのCMで見たり聞いたりしたことがあるでしょう。20年ぐらい前に処理した事件では20年間、借りたり返したりを繰り返して、400万円ぐらい取り返したことがありました。極端な例ですけど。


ただ、2006年に貸金業法が改正され、2010年に施行されました。また、最高裁が一連の画期的な(借主にとっては素晴らしく、貸主にとっては破滅的な)判断を示してくれたおかげで、こんな過払いが発生することはなくなりました。元金の減額ですら、しょぼいものになっています。


引直計算の結果、過払いが発生していれば、それを請求します。返ってきたお金は、他の貸主への返済に回すことができます。むかしは、こんな操作をして、すべての貸主からの借入残高が0円になり、しかも手元にお金が残る場合もありました。

ただ、過払いが発生しない場合には、こんな操作もできません。元金が少しぐらいは減額されたとしても、やはり返済すべきものが残る場合があります。

  • 返済計画-分割払いの回数

すべての債権者について、残元金が確定したら、次に返済計画を立てます。貸主に提案して、合意するための計画です。

原則として、最後の返済以後の利息は払わないことを前提として、36回、つまり3年で完済できるかを一つの目安とします。

36回を超えると債権者との合意ができなというわけではありません。ただ、36回を超える回数だと債権者がなかなか同意してくれないようです。


また、多数の弁護士の経験からして、分割返済は3年を超えると、かなりきつくなるようだということがあります。たとえば、車が欲しいので3年間貯金して買おうと思えば、我慢すれば車が手に入るのでがんばれます。それに比べて、無駄遣いした結果の返済は、完済したとしてもいいことがありません。そんなときに、人間は我慢しながら返済することがむずかしいようです。


今、「金貯めてから車買う奴なんて、今時いねぇよ。」と思ったあなた。そのとおりです。今時というより、アメリカでは第二次大戦前から分割払いで車買ってましたよね。今だって、車はローンで買うことが大部分ではないでしょうか。でも、ローンで車を買っても、所有者はあなたではありません。登録事項証明には所有者はディーラーとされていたりします。いわゆる所有権留保と言って、ローンの支払いが滞れば、ディーラーが車を引き揚げて、第三者に売却しローンの支払いにあてます。あなたが自由に売ったりはできません。でも、ローンを完済すれば、所有名義をあなたに移転することができます。売ろうと思えば自由です。あんまぱっとしませんが、いいことではあります。なによりも、ほとんど頭金もなかったのに、毎日車に乗れるようになりました。毎月のローンの支払いは、そのためのものだと思えば、支払いもあまり苦しくないでしょう。でも、債務整理では、毎月返済するからと言って、なにかのこのようないいことがあるわけでもありません。もちろん、自己破産しなくてよかったといういいことはあるのですが、車に比べれば、それで頑張って返済しようという気にはなかなかなれないようです。

  • 返済計画-毎月の支払額

支払回数と関係してくるのが毎月の支払額です。給料の額と相談しなきゃいけませんよね。

これも多くの弁護士の経験から、返済に回すことのできる金額は手取り月収の3分の1が限界だと言われています。別に統計とったわけでもなく、弁護士の経験から言われているだけのざっくりとした基準です。もちろん、月収10万円で5万円の家賃払っている人が3分の1だからと言って、3万3333円払えるわけがありません。あくまでもケース・バイ・ケースです。


あまり無理して返済額を増やしてはいけません。途中でぽしゃります。債務整理をしている間は、できるだけのことをしよう、できるだけのことができるはずだとか思っていますが、分割払いが始まってしばらくすると我慢が続かなくなってしまいます。結局、自己破産するしかなくなる場合もあります。最初から破産すれば、払わなくてもすんだのに、債務整理してから破産すると、破産するまでに返済した金額はまったくの無駄になります。分割返済がむずかしければ、破産した方が楽です。

  • 返済計画案

回数と毎月の支払額の兼ね合いで、返済計画案を考えます。たとえば5社からの借入があるのであれば、毎月の支払額をどう割り振るかを考えます。各社の残額を36回で割って、毎月5社に返済するというやり方もあります。

これに対して、各社につき毎月1万円ずつ返済するといった方法もあります。残額が少ない貸主への支払いは早く終わることになります。どっちでも変わらないようにも見えますが、後の方の方法だと、たとえばある貸主への返済が10回で終われば、あと26回分の返済についての振込手数料を節約できます。また、金額の少ない貸主への返済が徐々に終わってゆくと、達成感のようなものがあり、それからもがんばれます。

どっちにするかは、あなたと弁護士とが相談して決めます。もちろん、相手のあることですから、貸主がそれじゃダメだと言い出せば、他の返済計画案を検討します。

  • 貸主との交渉

返済計画案ができれば、それぞれの貸主に、いつから、いくら、いつまで支払うかの提案をします。すんなり同意してくれる場合もあれば、色々要求される場合もあります。

ある貸主が毎月の返済額のアップを求めてくれば、他の貸主への返済額を小さくするか、毎月の支払総額をアップさせるかを検討しなければなりません。

  • 交渉成立

すべての貸主から内諾が得られれば、合意書を取り交わして、交渉成立ということになります。

  • 返済

交渉が成立すれば、合意書の内容に従って、毎月返済してください。

  • スケジュール

受任から交渉成立までの期間はケース・バイ・ケースですが、おおむね6ヶ月程度を目安とします。

委任契約を取り交わして、弁護士が受任通知を貸主に発送すれば、請求は止まります。まずはほっとしましょう。交渉成立まで貸主への返済はしなくて結構です。ただし、弁護士への費用は支払ってください。弁護士はサラ金のような無理な取立てはしませんが、信頼関係にひびくので、きちんと支払ってください。


返済完了

すべての貸主に全額の支払いが終われば、あなたは借金漬けの状態から抜け出たことになります。なかなか厳しい3年間だったと思いますが、やり遂げました。あんな積極的なことではありませんが、あなたは一つのことを成し遂げました。自信を持ってよいと思います。ただし、今後は借金しないようにしましょう。

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